2026年12月25日「こども性暴力防止法(通称:日本版DBS制度)」がいよいよ施行されます。
子どもと接する教育・保育の現場での性暴力を未然に防ぐため、国が初めて全国的に整備する制度です。
この記事では、制度の目的、対象範囲、既に働いている人の取り扱い、前科と就業制限の関係などを中心に、わかりやすく解説します。
●こども性暴力防止法とは?
この法律は、子どもと関わる仕事に従事する人が、過去に性犯罪歴があるかどうかを国が確認し、リスクのある人物が子どもと接する業務に就かないようにするための制度です。
イギリスで先行して導入されている「Disclosure and Barring Service(DBS)」制度をモデルにしており、日本では“日本版DBS”と呼ばれています。
こども家庭庁の公式リーフレットでも明記されている通り、制度の柱は次の3点です。
①性犯罪歴の有無を国が確認
②こどもと接する業務からの排除(必要に応じて)
③被害の未然防止・早期発見のための環境整備
●対象となる施設と業務は?
制度の適用対象は、大きく2種類に分かれます:
【義務対象】
公私立を問わず、学校、認可保育所、児童養護施設、障害児施設など。
これらの施設では、法律により性犯罪歴の確認が義務づけられます。
【認定対象】
放課後児童クラブ、学習塾、英会話教室、スポーツクラブなど。
これらはこども家庭庁に申請し「認定」を受けることで、制度の適用対象となります。認定されると認定マークの使用や、国のサイトでの公表が可能です。
【確認対象となる職種】
教員、保育士、スクールカウンセラー、バス運転手、警備員など、「勤務形態に関係なく、こどもと継続的に接する人すべて」が対象です。
●「既に働いている人」も対象?
はい、対象になります。
これは非常に重要なポイントで、「新規採用者」だけでなく、施行時点ですでに在職しているすべての職員についても、性犯罪歴の確認が行われる見通しです。
つまり、制度が始まる時点で働いている教職員やスタッフも、確認対象になるのです。これは、子どもの安全を最大限に守るために必要な措置です。
●「一度でも性犯罪歴があれば」一生ダメなのか?
多くの方が気になるのがこの点です。
法律そのものには「過去に一度でも前科があれば永久に就業不可」と明記されてはいません。
しかし、実際の制度運用では次のような基準が想定されています:
【照会対象となる前科の期間】
実刑を受けた人:刑の執行終了から20年以内
執行猶予・罰金刑など:裁判確定から10年以内
これは「何年間さかのぼって性犯罪歴を照会するか」という“情報照会可能な期間”です。
言い換えれば、この期間を超えると国は前科を確認できない可能性があるということです。
つまり、前科があっても一定期間が経過していれば、制度上は「確認できない=就業制限がかからない」ケースもあり得ます。
【注意点も】
この照会期間は“事実上の線引き”に過ぎません。たとえ確認できない場合でも、採用する施設側が独自のポリシーで就業を見送ることも可能です。また、今後の政令やガイドラインで追加の基準が設けられる可能性もあるため、今後の動向に注意が必要です。
●子どもを守るための事業者の義務とは?
制度では、事業者(学校・保育所・認定事業者など)に対し、以下のような対応が求められます。
・性犯罪歴の有無を確認すること
・確認の結果、リスクがあれば子どもと接する業務から外すこと
・職員への研修や、こどもの相談窓口の設置
・性暴力の疑いがあった場合の調査・対応体制の整備
● 行政・教育現場・保護者が備えるべきこと
制度施行に向けて、現場では以下のような準備が求められます。
・対象職員の洗い出し
・性犯罪歴照会の同意取得体制の整備
・万が一該当者が確認された場合の配置転換や就業制限のルール整備
・職員、保護者への制度の周知
行政書士や社労士などの専門家と連携し、規程整備や認定申請、相談体制の構築を進めることが鍵です。
●まとめ
こども性暴力防止法(日本版DBS制度)は、子どもを守るための歴史的な制度改革です。
その中心は、「性犯罪歴のある人が子どもと接する業務に就かない社会」をつくることにあります。
一方で、既存職員への対応、前科と就業制限の関係、情報管理など、制度運用に関する課題も少なくありません。
今後の政令やガイドラインを注視しつつ、すべての大人がこの制度の意義を理解し、子どもたちにとって安全な社会を一緒に築いていくことが求められています。
認可の申請手続きや、就業規則の改定には専門家へご相談することをお勧めします。
弊所でも随時行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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